窓から眺める世界遺産 ー グアナフアト ー

こんにちは、アトモフの風景情報の編集者、山口です。

Atmoph Windowに映し出される世界遺産のバラエティ豊かな風景、お楽しみいただけていますか。そんな窓の中の世界遺産のひとつをピックアップして深掘りするシリーズ。しばらく間が空いてしまいましたが、第3弾をお届けします!

今回ご紹介するのは、メキシコのグアナフアト。映画『リメンバー・ミー』のモデルになったと言われるカラフルな街並みには、どんなストーリーが隠されているのでしょうか。さっそくAtmoph Windowで「グアナフアト」を映し出しながら、窓の向こうに思いを馳せてみましょう。


都市の始まりは、銀の発見

メキシコ中部、標高約2,000mの丘陵地に位置するグアナフアト。スペインの植民地時代、1548年に近くで銀の鉱床が発見されたのをきっかけに、街が築かれました。

街には多くの労働者が集まり、大量の銀が採掘されて世界中に流通するようになります。18世紀に入るとグアナフアトの銀は世界の産出量の約4分の1を占めるまでになり、世界で最も重要な銀の産出地として、その名を轟かせたのです。

銀のおかげでグアナフアトは莫大な富を得ることとなり、街には次々に絢爛豪華な建物が築かれていきました。そのひとつが、イエズス会によって1765年に建設されたラ・コンパニーア教会。スペイン独特のチュリゲレスコ様式が用いられており、多彩な装飾のファサードが目を引きます。

ラ・コンパニーア教会のファサード
Photo: AlejandroLinaresGarcia / CC-BY-SA-4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:OratoriaoSanFelipeGTO1.JPG

この教会、実は下の風景の右側に映っています。側面を間近から撮影したものでファサードは見られませんが、街中に佇む雰囲気を感じ取っていただける風景です。

窓の右端に映り込むラ・コンパニーア教会
https://atmoph.com/ja/views/pages/city_of_guanajuato_3

鉱夫の英雄、ピピラの物語

植民地時代、銀の産出によって支配者が経済的に潤う一方、労働者や農民は搾取や貧困に苦しみ続けます。何百年もの間溜まり続けた不満や怒りが最初に爆発したのが、グアナフアト近郊でした。1810年、ドロレスの街で司祭ミゲル・イダルゴに率いられて住民たちが蜂起します。

イダルゴ率いる反乱軍は、行軍中に次々と住民を味方に加えながら、グアナフアトに到達します。イダルゴは街の明け渡しを要求しましたが、支配者側は街の穀物倉庫に立てこもり、これを拒否しました。

強固な倉庫を攻めあぐねる中、反乱軍に参加していた銀山の鉱夫ピピラは、落ちていた石板を盾にして、銃撃から身を守りながら松明で倉庫の扉に火をつけ、開け放つことに成功します。これによって穀物倉庫は陥落、街は反乱軍に占拠されたのです。

松明を掲げるピピラの像

この件を皮切りに各地で反乱が起こり、11年の時を経てメキシコは独立を果たします。反乱軍に最初の勝利をもたらしたピピラは英雄として称えられ、1953年には街の高台に大きな彫像が建てられました。上でご紹介した風景に、実はこの像も映っています。丘の上から街を見守る姿をパノラマの左側の窓から探してみてください。

グアナフアト名物!カラフルな街並み

グアナフアトの街並み
https://atmoph.com/ja/views/pages/city_of_guanajuato

ピピラの像が立つ丘は、グアナフアトの街を見渡せるビュースポットとして知られています。その丘から眺めた風景がこちら。鮮やかな色で彩られた家並みが山肌にびっしりと広がっているのがよくわかります。

風景の手前中央で鮮やかな黄色が目立つのは、聖母大聖堂。1696年に建設されたカトリック教会で、グアナフアトのシンボルとなっています。聖母大聖堂は、Atmoph Windowのいくつかの風景に登場しています。ぜひ探し出して、時間帯やアングルによって見え方の異なる大聖堂の姿をお楽しみください。

ピンクや水色など、色とりどりの建物
https://atmoph.com/ja/views/pages/avenida_benito_juarez

大聖堂の黄色と赤のコントラストもさることながら、街には思わず目を奪われるカラフルな建物がたくさん。元々ピンク色の砂岩を使った歴史的建造物もありますが、多くの家屋が鮮やかに色付いていったのは、19世紀後半以降のことです。安価なペンキが普及し、どれも同じに見える家々の中で自分の家を見つけやすくするためや、太陽の光を反射させて暑さを抑えるため、などの理由で塗装されていったようです。


石畳の路地にオリジナリティ豊かなペイントが施された建物が軒を連ねる街並みは、どこを見回しても絵になる景色。思いつくままに歩き回って、お気に入りの場所を見つけたくなりますね。

街の地下に隠された秘密

入り組んだ路地に歴史的建造物が軒を連ねる、グアナフアトの中心部。昔ながらの街並みが維持されてきた理由のひとつが、街の地下に隠されています。

グアナフアトは急峻な谷沿いに造られた街で、昔は雨季になると洪水が発生し、多大な被害を及ぼしていました。そこで、人々は洪水を防ぐために建物の基盤を高くします。建物の位置が高くなると、その分川は深くなり、水量の増加に対応できるようになります。こうして深くなった川の真上にまで建物が広げられていき、川が地下を流れる構造が出来上がりました。

20世紀半ば、より深い位置に河川を流すトンネルを作り、地下の河床は車道として利用されることになりました。こうした古い河床や鉱山技術を活かした排水トンネルなどの施設を核として、次々と地下に道路が築かれていき、現在では総延長が9km以上の交通網となっています。

グアナフアトの地下トンネル
Photo: Comisión Mexicana de Filmaciones / CC-BY-SA-2.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:T%C3%BAnel_La_Galere%C3%B1a,_Zona_Centro,_Guanajuato-_La_Galere%C3%B1a_Tunnel,_Center_Zone,_Guanajuato_%2824232942005%29.jpg

このように、車社会になっても地上に広い道路を建設しなくて済んだため、グアナフアトの街は昔ながらの入り組んだ細い路地が守られたのです。車よりも人が主役の街は、歩きやすくて散策にぴったり。また、石積みの壁やアーチ天井など趣ある地下道も観光スポットになっています。


メキシコでは、ご紹介したグアナフアト以外にも同じく銀を産出した街サカテカスや、銀を輸送した道、道沿いで栄えた他のいくつかの街も世界遺産に登録されているとのこと。貴重な鉱物が人類にもたらす影響力の大きさを実感させられます。それぞれの街がどんなところか興味が尽きませんが、今回はこの辺で。また次回の世界遺産シリーズもお楽しみに!